土地活用で医療施設に投資はあり? 医療モールやクリニックへの不動産投資

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土地活用で医療施設に投資はあり? 医療モールやクリニックへの不動産投資

先月の「サ高住への不動産投資」でも取り上げたように、不動産投資や土地活用の方法は年々多様化しています。これまで王道だった住宅地、店舗、駐車場などへの遊休地活用に加え、近年注目を集めているのが「医療モールなど医療施設への投資」です。少子高齢化が進む日本において医療施設による土地活用は地域に貢献できるうえ、収益も安定しやすい点がメリットだと言われています。ただし、土地活用や不動産投資の手法としてはニッチな分野であり、経営の仕組みや収益化がわかりにくいかもしれません。

 

そこで今回は医療モールをはじめとした医療施設で土地活用や不動産投資をする場合のメリット・デメリット、医療施設の経営に向いている土地の特徴や、施設の種類について解説していきます。医療施設での土地活用を検討されている方や、将来を見越して新しい不動産投資のジャンルを検討されている方はぜひ参考にしてください。

医療施設で土地活用
4つの仕組みと契約形態

 

医療施設への不動産投資や土地活用は、オーナーが土地や建物のテナント貸しを行い、そこで医師が医療施設経営を行うことにより収益をあげる方法で、収益源は事業者から支払われる土地の賃料やテナントとしての家賃になります。所有地を活用して医療施設経営を行う方法は以下の4つに分類できます。経営方式によってそのメリットや収益性は大きく異なるので、自分に合った方法で医療施設を経営することが大切になってきます。

 

①土地だけを貸す方法

ひとつ目は、土地オーナーが事業者に土地のみを貸して、医師が建物を建てて医療施設経営を行う方法です。診療所は医師が建てるので建物の所有権は医師に帰属します。医療施設の建築は事業者が行なうため、土地のオーナーは初期費用を負担せずに済みます。また、数十年間の契約期間満了後は更地の状態で土地を返還してもらえる点もメリットでしょう。実態としては定期借地権に近いと考えて問題ありません。ただし、他の経営方式と比べると収益性は最も低くなるため、ローリスク・ローリターンの経営方式と言えます。

 

②自己負担で施設を建築して貸す方法

ふたつ目は、土地オーナーが医療施設の建築費用を自己負担し、建物を利用したい事業者を募って賃料を得る方法です。オーナー自らが診療所を建てるため、その建物の所有権もオーナーにあります。建物の賃料は地代よりも高く設定しやすいため、高い収益性を見込めます。万が一空室となっても診療所として別の医師に貸すなどして経営を続けやすいという特徴もあり、自己資金に余裕があるのであればこの方法がおすすめです。

 

また、この方法は税対策にも効果的です。賃貸目的の建物を建てて第三者に貸している土地は「貸家建付地」として評価されるため、更地のままにしているよりも相続税を節税できます。(詳しくはこちら)さらに、建築費用を借り入れた際の利息や建物価格の減価償却費は経費にできるため、所得税を抑えることも可能になってきます。

 

③建設協力金で施設を建築して貸す方法

リースバックとも呼ばれ、土地を使いたい事業者から建設協力金を預かり、事業者の希望する医療施設を建築して貸す方法が3つ目です。預かった建設協力金は、建物完成後に賃料と相殺するかたちで事業者に返済します。建築資金の調達が不要なうえ、事業者が確定した状態での計画進行が可能なのがポイントと言えるでしょう。建物の所有者は土地オーナーになるため、貸家建付地として相続税を節税できるメリットもあります。

 

④既存の賃貸物件のテナントとして貸す方法

土地に賃貸物件がある場合、その賃貸物件を改装しテナントとして医療施設経営を行うこともできます。特に土地代が高額な都市部ではテナントを利用する開業医が多く存在します。建物をいちから建てるのに比べて初期投資の負担が小さく、リフォームにかかった費用は家賃に上乗せして回収できるため、比較的ハードルの低い経営方式でもあります。ただし、医師にとっても開業や移転のハードルが低く、撤退される可能性が高いというデメリットもあります。

 

 

都市部郊外の住宅地の
建て貸しが注目されている

 

上記4つの方法のなかで最近注目されているのは「②自己負担で施設を建築して貸す方法」です。クリニックの場合、土地オーナーが開業を希望する医師の意向に沿って建物を建て、医師がそれを借り受ける契約を結びます。医師の側からすると、土地購入や建築費用をかけずに、自らの理想とする設計のクリニックを低リスク&低コストで実現することができます。土地オーナー側からすれば初期投資はかかるものの、遊休不動産の活用法として医師という社会的信用の高い相手に貸すことで、長期的に安定した運用が期待できます。また、弊社今村不動産のお客様の地主の方にもいらっしゃいますが、医療を通じて地域社会に貢献をしたいという方も一定数いるため、貸主・借主双方のメリットが合致して契約に至るケースもあります。

 

この傾向は特に首都圏、関西圏、名古屋、福岡、仙台など都市圏の、郊外の駅から少し離れた住宅街で多く見られます。大都市圏の主要な駅前はすでにクリニック過多で競争も激しくなっています。一方、駅から離れた住宅地は既存のクリニックが多くなく、診療科目にもよりますが患者数を見込むことが可能です。新規開業する場合、郊外の住宅地の好立地に場所を探されるドクターが増えているようです。

 

さらに、近年は「医療モール」と呼ばれる、内科や耳鼻咽喉科、小児科、歯科、整形外科など診療科の異なる複数のクリニックと調剤薬局が1つの建物内や場所などに集合している医療施設が都市部・郊外を問わず増えつつあります。単なる医療施設としての機能のみならず、地域医療のより良い発展にも寄与する医療モールは、独立を検討する医師の間でもメリットのある開業先として注目されているからです。地域医療の活性化の役割を担う医療モールは今後もますます増えていくと予想されますし、土地活用や不動産投資先としての注目度も上がっていくかもしれません。

 

 

そもそも医療施設は病院と違う?
投資に向いているジャンルは?

 

医療施設には、診療所(クリニック)と病院の2種類があり、土地や資金などからどちらで経営を行うか決める必要があります。

 

<診療所・クリニック>

診療所は、入院用ベッドが19床以下の比較的小規模な医療施設、もしくはベッドがない医療施設のことを指します。入院用のベッドが19床以下の比較的小規模な医療施設を「診療所」といいます。入院施設を備えていない場合も、診療所に分類可能です。少し古いデータではありますが、2019年5月末の時点で全国の診療所は102,299施設あり、そのうち有床診療所が6,730施設、無床診療所が95,569施設、歯科診療所が68,483施設となっています。病院よりも比較的少ない設備で経営を開始できることから、広い土地を持っていない方でも診療所として活用することができます。

 

<病院>

20床以上の入院用ベッドがある医療施設は「病院」に分類され、そのなかでも100床以上の大規模な病院は「総合病院」として扱われます。手術や精密検査を行なうこともあるため、診療科目ごとに専門スタッフが配置されているのが特徴です。診療所に比べ利用者が多く、契約も法人相手であることも多いため収益性が高い傾向にあることがメリットです。ただし、診療所に比べて建物規模が大きくなるため、病院として土地を活用させるには目安としては200坪以上の土地の広さが必要になり、建物を建てて貸す方式だと数億円以上の資金が必要になってきます。

 

以上のように、不動産投資や遊休地の活用としては診療所(クリニック)の方が身近で取り組みやすいと言えます。ただし、規模が小さいとはいえ無床診療所を除く医療施設は特殊建築物扱いになるので注意が必要です。特殊建築物とは不特定多数の人が利用する施設で、火災発生のおそれがあって周辺環境への配慮を必要とする建物のことを指します。階数や床面積が所定の条件に該当する場合には、建築基準法に基づいて耐火や防火の措置を行う必要があります。また、特殊建築物の建築にあたっては、床面積が100m2を超える時は建築確認が必要になってきます。無床診療所は特殊建築物ではありませんが、構造に対し面積や階数、高さ、軒高が所定の条件に当てはまる場合、もしくは都市計画区域内そのほかの指定の区域内に建築するものにあっては建築確認を行う必要があります。

 

簡単ではありますが、クリニックの診療科目別で目安となる坪数をまとめておきますので、参考にしてください。

 

 

 

医療施設経営に向いている土地
向いていない土地がある?

 

公共性が高い医療施設とは言え、他の店舗テナント物件同様、経営するうえで土地選定は重要なポイントになってきます。医療施設経営を行うのに適している土地について考えてみましょう。

 

○住宅地にほど近く人通り・車通りがある

医療施設経営は他の店舗テナント経営同様、需要のある土地で行うことが前提です。その意味では住宅地やその近くの土地は診療所の立地に最適です。住宅地での土地活用や不動産投資を検討していたが、次々と建売住宅や賃貸住宅が乱立し、すでに居住用不動産は飽和状態で参入できずにいる…といった人にも、診療所経営ならチャンスがあるかもしれません。その場合、ファミリーが多い地域、高齢者が多い地域など住民の特徴により適した診療が変わってくるため、診療所を経営する際は小児科や歯科、耳鼻科などニーズに合わせた施設を選ぶことも重要なのは忘れないようにしましょう。

また、大通りや駅・バス停から近いといった交通アクセスの良さも重要です。駅やバス停、スーパー、ショッピングモールのそばなど不特定多数が行き来する場所なら認知されやすく好立地だと言えます。落ち着いた住宅地であっても学校や図書館、公民館のような公共施設のそばなら人目に止まりやすいでしょう。

 

×競合となる医療機関が近隣に多い

同じ診療科目の医療施設が近隣に集中していると患者の奪い合いになりクリニック経営にも影響します。すでに地域に根差したクリニックモールや医療ビルの近くの立地も、同じ理由で新規開発にはおすすめできません。

 

※用途地域による制限にも注意

用途地域とは、都市計画法によって定められた土地の用途を限定するもので、地域における建物の用途に一定の制限が設けられています。

 

詳しい記事はコチラ

 

市街地の利用が住宅地、商業地域、工業地帯などに区分されているため、土地活用の際は、自身の土地がある場所の用途地域を必ず確認し、希望する施設の建築可否を判断しましょう。病院は第1種・2種低層住居専用地域と工業地域、工業専用地域には建築することができません。一方、診療所には用途地域の制限がなく、どこの地域にでも建築できます。所有地の用途地域を調べたい時は、自治体に電話をして住所を伝えると電話口で教えてくれます。自治体のWebサイトに用途地域マップが出ている場合もあるので、確認することをおすすめします。

 

 

医療施設で土地活用を行う
メリット&デメリット

 

ここまでは医療モールやクリニックなど医療施設の種類や経営形態についてみてきましたが、ここからはいよいよ土地活用や不動産投資におけるデメリット・デメリットについて考えていきます。

 

メリット①長期の契約で収益が安定する

医療施設での土地活用として土地だけを貸し出す場合であれば、定期借地として10年以上の契約が見込めます。テナントの場合は借主の希望に沿う必要はありますが、開業の初期費用を回収するため長期で利用してくれる可能性が高いと言えます。また、医療施設は流行に左右されることのない、誰もが生きている限り必要とされる施設です。一度地域に根付いた医療施設は簡単につぶれないため、少子高齢化で人口が減少するとはいえ適切に経営していく限り、少なくともこの先40年は患者が減ることもなく安定した経営を続けることができるでしょう。医療施設によっては開業した医師の子供や孫の世代まで経営を続けてくれる可能性もあります。

 

メリット②土地にかかる税金が安くなる

契約形態の箇所でも簡単に説明しましたが、賃貸目的の建物を建てて第三者に貸している土地は「貸家建付地」として評価されるため、更地のままにしているよりも相続税を節税できます。さらに、固定資産税は不動産の評価額に税率をかけて求められますが、活用のため貸し出すと、自身で使うより利用の制限がかかり、土地の場合は20%程度、建物の場合は30%程度評価が下がります。またテナントとして建てた戸建てやビルでは、減価償却費を計上できます。適応は建物部分だけですが、耐用年数に応じた割合で建築費の一部が経費になります。減価償却を計上した分だけ収益は小さく見せられ、支払う所得税や住民税の節税に役立ちます。

 

メリット③地域や社会貢献につながる

「2025年問題」が目の前に迫る超高齢社会の現代において、医院施設経営は立派な社会貢献のひとつと言えるでしょう。地域にある医療施設の減少は、住み続ける人にとって深刻な問題です。土地活用で医療施設を誘致できると、社会貢献になり地域での信用度も高まります。テナントや借地の契約が終了した場合でも、高額での売却や早期の借主の発見につながってくれるでしょう。

 

 

デメリット①別の土地活用へ転用するのは難しい

医療施設は地域のコミュニティーのひとつであり、経営がうまくいくほど地域住人との関係は強固になります。そうなると、その土地を活用して別のビジネスを始めたいと思っても、簡単に契約終了するわけにはいきません。また、定期借地の契約では10年以上は自己都合で簡単に解約できません。安定した長期の収益は魅力的ではありますが、短期間で効率的に土地を運用したい方には不向きかもしれません。

 

デメリット②空室になるとテナント付が困難

アパートやマンションの賃貸経営と違い、医療施設のターゲットは開業医に限定されるので新規の利用者は簡単に見つかりません。一度医師に撤退されてしまうと次の借り手を見つけるのは至難の業。もし経営不振で撤退されてしまっている時は、集客が見込めないことから借主も敬遠するでしょう。万が一のことも考え、建物の設計の際にはできるだけ幅広い診療科目に対応できるような、可能であれば診療所以外のテナントとしても利用できるような無難な設計としたいところですが、特殊な施設だけに柔軟な建築は難しいのが実情です。

 

 

医療施設としての土地活用は
プロの力を借りるべき

 

いかがでしたでしょうか。解説してきたとおり、医療施設の経営は賃貸住宅経営に比べて初期費用をおさえられ、さまざまな付加価値を生み出す可能性がある土地活用である反面、その成否は所有地の立地にかかっているといっても過言ではなく、場合によっては別の土地活用を検討した方がよいこともあるでしょう。また、ニーズの見極めや施設の誘致、届け出など課題も多くあります。「所有地で診療所を経営したい」と考えたとしても、都合よく「この地域で開業したい」という医師と出会えるものではありません。さらに、近隣に調剤薬局やドラッグストアなどの医薬品販売施設がない場合は、医療施設と併せて誘致が必要になってきます。

 

すべてを自身の力で進めるのは難しいため、医療施設の土地活用実績を持つ専門業者を見つけて相談するのが第一歩です。今村不動産ではまだまだ実績は多くはありませんが、将来的な不動産価値の向上を目指して医療モールの開発に積極的に取り組んでいます。医療関係の経営や投資に詳しい専門家もご紹介可能ですので、お気軽にご相談ください。

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