高齢者向け住宅「サ高住」や介護施設は 不動産投資先として考える余地あり!?

  • #法人投資
  • #ロードサイド
  • #アイデア
高齢者向け住宅「サ高住」や介護施設は 不動産投資先として考える余地あり!?

先月の「不動産投資の2025年問題」でも取り上げましたが、少子高齢化が進むと賃貸需要の減少や空室リスクの拡大、不動産価格の下落リスクなどデメリットばかりが思い浮かびます。一方で、少子高齢化が進むことでメリットが生まれる不動産投資もあるのはご存知でしょうか。そう、高齢者向け住宅や介護施設です。

 

最近では介護の必要はなくてもそれまで住んでいた住宅を売却し、サ高住(サービス付き高齢者住宅)と呼ばれる高齢者向けの住宅に移り住む人も増加傾向にあります。需要が高いということは、不動産投資先として高齢者向けの施設も有力になるということ。REITやクラウドファンディングなどの普及を背景に、以前よりもさまざまなタイプの物件に、個人投資家でも投資ができる時代になってきていますが、なかでも老人ホームや介護施設、サービス付き高齢者住宅は近年活発化しつつある不動産投資の領域のひとつです。

 

そこで、この記事では不動産投資先としての介護施設について解説していきます。

すでに4人に1人が高齢者
将来需要が高まる介護施設

 

内閣府の調査では、2030年には3人に1人が高齢者になるという予測があります。そこで需要が高まっているのが高齢者向けの介護施設です。いままでは老人ホームというと、介護が必要な高齢者や日常生活を自分だけでは行えない人が入る場所というイメージがありましたが、ご存知の通り近年ではニーズに合わせて施設の多様化が進んでいます。実際、まだまだ元気な人であっても、それまで住んでいた家は子供が独り立ちして広すぎたり、バリアフリー化されていないので今後同じ家で暮らすには不安があるといった理由で自宅を売却し、サービス付き高齢者向け住宅という自立できる高齢者専門の住宅に移り住む人も増えています。

 

また、住宅施設以外にも、病院や診療所・薬局などの施設や、これらが集積している医療モール、高齢者向けのデイサービスやフィットネスクラブなどの健康増進施設もニーズが高まっています。これらを総称して、不動産の分野では「ヘルスケア不動産」と呼ばれることがあります。

 

 

コロナでさらに注目度が高まり
成長が期待できる分野のひとつ

 

ヘルスケア不動産はコロナの影響が相対的に小さかった部門です。2020年上半期には新型コロナの感染拡大の影響で株式やREITの多くが深刻なダメージを受けましたが、ヘルスケア部門は高齢者などが居住もしくはサービスを利用することによる賃料や利用料が利益の源泉になります。新型コロナの感染拡大があったとしても、高齢者が転居が進むことはないため、影響は限定的でした。

 

また、実はREITを通じたヘルスケア不動産への投資は日本政府も後押しをしています。政府は2014年から2015年にかけて「高齢者向け住宅等を対象とするヘルスケアリートの活用に係るガイドライン」「病院不動産を対象とするリートに係るガイドライン」を設定し、ヘルスケア不動産へ投資・運用する場合のルールづけを行いました。

 

これは、高齢化社会の中でヘルスケア施設の不足に課題意識を持っていた政府が、リートを通じた不動産投資を活性化することによるヘルスケア不動産の開発促進を狙ったものだと考えられます。少子高齢化という社会状況に加えて、政府も投資促進を後押ししていることもあり、今後の不動産における投資先としてのヘルスケア不動産の注目度は高まっていると言えます。

 

 

サ高住など高齢者向け施設は
不動産投資先として将来有望!

 

そんな介護施設や高齢者向け住宅ですが、不動産投資の観点からみると将来的なメリットは大きいと考えられます。

 

①人口減少時代には珍しい「拡大市場」で空室リスクも少ない

高齢者は今後も増え続けるため、高齢者向け施設の需要は高まる一方だと言えます。長期的に見て空室リスクが小さいことは、投資先としてポイントが高いと言えます。また、高齢者向け施設は更新がないことも空室リスクが少ない要因のひとつです。通常のマンションやアパートといった賃貸契約の場合は、契約更新や家族構成の変化によって引越しを検討されるものですが、高齢者向け施設は一度入居したらそのあとに引越すといったことは考えにくく、空室リスクを抑えられる点もメリットの一つになります。

 

②オフィスや住宅に比べて、立地条件の影響が比較的小さい

不動産の収益性に大きく関連する立地条件ですが、高齢者の場合はリタイアしている方も多く、通勤の便の影響は小さくなります。駅から遠くても環境がいい場所、自動車でのアクセスがよく家族などが訪問しやすいところなどにも高齢者施設が増えているのはそのためです。つまり、少し都市から離れた地方でも十分に勝ち目があると考えられますし、むしろ都心だと土地がなくて高齢者向け施設を建てられないといったケースもあるため、広大な土地がある地方のほうが建てやすいといった側面もあります。オフィスや通常のマンションアパートの不動産投資と比較すると、高齢者向け施設は立地面の影響が比較的小さいのも魅力でしょう。

 

③家賃収入に加えて介護サービスでの収益も見込める

家賃収入だけではなく介護サービスなどでの収益が見込める点もポイントです。介護サービスそのものは資格を持つ事業者に委託すれば対応できます。郊外の使用しなくなった物流施設などの跡地は、高齢者向け施設として有望かもしれません。ただしデメリットとしては、既存施設を改装する場合・新規に建築する場合どちらにおいてもバリアフリー対応、各種専門設備の用意、関連法令への適応などが求められ、一般的な住宅やオフィスよりも初期投資が多くなる傾向があることが挙げられます。

 

 

サ高住への投資には
補助金や各種優遇措置がある

 

将来的なメリットに加え、各種優遇制度があることも高齢者向け住宅への不動産投資の利点でしょう。

 

サ高住の建築費用や改修費用には、国から補助金が出ます。具体的な補助金額は、1戸当たり床面積が30㎡以上は135万円、25㎡以上は120万円、25㎡未満は70万円。ただし、1戸あたり30㎡以上のサ高住に対する135万円の適用は総戸数の20%までです。それ以降は120万円/戸となるため、補助金額を計算する際は注意しましょう。また、既存のサ高住に併設施設を追加する場合、1施設あたり1000万円の補助金が出ます。

 

また、サ高住経営では老人ホーム経営などと違い各税金の節税ができます。各自治体ごとで減額割合が異なりますが、サ高住経営を始める場合5年間の間は建物にかかる固定資産税額が1/2~5/6となります。さらに、不動産取得税も建物と土地にかかる両方の税制優遇措置があります。建物では、課税標準から戸数×1,200万円控除されます。ただし、条件があり1戸あたり30㎡以上であることと、総戸数が10以上である必要があるため注意が必要です。また、不動産取得税で優遇措置を適用させるためには、建築費補助を受けていることなどが必要になります。制度は常に変わりますので、最新の情報をチェックするようにしましょう。

 

さらに、サ高住経営では、他の賃貸物件と違い所得税や法人税の優遇措置もあります。サ高住経営を始めると、所得税と法人税を5年間の間40%割り増しで償却を行うことができます。建物の法定耐用年数が35年未満の場合は28%となります。法定耐用年数は建物の構造によって変わります。各構造の法定耐用年数は、木造が22年・鉄骨造が19年~34年・RC造が47年なので、40%の割り増し償却を行うにはRC造でサ高住を建てる必要があります。

 

 

サ高住は個人投資家には
ハードルが高い投資

 

居住用のマンションやアパートと異なり、高齢者向けの施設は介護や食事提供、簡易的な医療サービスの提供など様々な機能が必要となります。そのため、単なる集合住宅よりも建物自体が大型化するため、個人の投資家が物件一棟を購入するのは困難だと言えるでしょう。仮に資金的なハードルを達成できたとしても、医療関係施設や高齢者向け施設などの資産価値の見極めには、賃貸住宅による不動産投資とは異なる専門性や知見が必要になってきます。そのため、個人投資家が適正価格の分析や魅力的な投資先の発掘をおこなうのも容易ではないでしょう。個人がサ高住をはじめとしたヘルスケア不動産の領域へ積極的に投資を行っていくためには、REITや投資信託、クラウドファンディングなどを活用した投資が現実的です。

 

しかし、サ高住をはじめとしたヘルスケア関連施設にREITなどの投資ファンドの資金が活発に流入するようになったのはここ数年の話。投資ファンドの資金を活用することに慎重なスタンスの施設運営業者もまだまだ多いとは言えないのが現実です。ただ、REITやクラウドファンディングを通じた投資事例は着実に増えてきており、ヘルスケア不動産投資を通じた社会貢献を進めようとするファンド運営者の誠実なスタンスが社会的に広がれば、ファンドを通じたヘルスケア不動産への投資は確実に拡大していくでしょう。

 

 

こんな投資家・企業の方は
サ高住を検討しても良いかも

 

サ高住の各部屋の床面積は、原則として25㎡以上という決まりがあります。さらに居住部分の他にサービス施設を併設する必要があるため、サ高住を建築するには、広い土地を所有していることが前提条件となります。一方で、マンションやアパートへの投資において重要である立地の良さという条件はあまり求められないので、地方や郊外に広い土地を所有している人に向いていると言えるかもしれません。また、サ高住は広さが必要であるのに加えてバリアフリーな設計なども必須になってくるので、建築には多大な費用がかかります。最低でも億からと考えた方が良いでしょう。億単位の投資が出来るくらい余裕のある方に向いている投資だと言えます。

 

また、経営に関しては自分で介護スタッフを雇い、入居者の募集や契約も行って経営を行うのは現実的だとは言えません。法令などの知識も必要になりますし、介護に携わる人材が不足している日本の現状で、介護スタッフを雇って自ら経営していくのは、介護サービス業界によほど明るい人でなければ厳しいと言えます。以下、3つの方式が考えられますが、いずれも一般的な居住用の不動産とは違った難しさがあります。その意味では事業用の投資経験がある投資家の方や企業など、ある程度不動産投資に長けた方向けの投資になります。

 

余談ですが、私ども今村不動産は事業用の不動産開発を強みとしており、高齢者向け住宅や介護施設の開発実績もございます。運営に際した契約締結のサポートも可能ですので、何かございましたらご相談ください。

 

①一括借り上げ方式

一括借り上げ方式は、自分自身でサ高住を建てたあと事業者に貸し出して経営を任せる方式で、賃料を事業者から受け取り収益を得ます。経営を全て任せるので管理業務を行う必要がなく、空室リスクや家賃滞納問題も事業者が対処してくれるため、自分が経営に関わることなく収益を得ることが出来ます。デメリットとしては、事業者に対してかなりの手数料を支払うことになるため(一般的に賃料の2割程度)、収益の面からいうと、このあと紹介する方法に比べて低くなってしまうでしょう。

 

②テナント方式

テナント方式は、介護サービスは業者に委託し、入居者の募集や契約はオーナー自身が行う方式です。入居者からは賃料を、介護サービスを委託している事業者からはテナント料を受け取ることになり、収益性は高くなるでしょう。その代わり、空室リスクにも自分で対処し、入居者を見つける努力をする必要がありますし、質の良い介護サービスを良心的な料金で提供してくれる事業者を自ら探して契約する必要もあります。行わなければならないことが多く、経営者としての資質が問われる方式と言えます。

 

③委託方式

委託方式は、介護サービスは業者に委託して入居者の募集や契約はオーナー自身が行う方式で、一見するとテナント方式と同じですが、「入居者からは賃料と介護サービスの料金を受け取り、介護サービスを委託している業者には手数料を支払う」という部分が異なります。委託方式では入居率と収益の高さは比例しているため、空室が無い場合は良いのですが、空室が出た場合は収益が落ち、委託する介護業者に対する手数料支払いの負担が大きいというデメリットがあります。

 

 

高齢者施設への不動産投資は
経験あるパートナーの協力が必要

今回は不動産投資における高齢者向け施設への投資についてみていきましたが、いかがでしたでしょうか。株式や投資信託にもトレンドがあるように、不動産投資にも時代に応じたトレンドがあります。人口減少と少子高齢化を逆手に取った高齢者向け施設への不動産投資は一種のトレンドであり今後増えていく可能性があります。

 

REITやクラウドファンディングを使わない場合、個人投資家にはハードルが高い投資ではありますが、中長期的には安定した投資ジャルだと言えます。これを機に高齢者向け施設に対しての不動産投資を一考してみてはいかがでしょうか?

ピックアップ

不動産デベロッパーの知見を活かした不動産投資メディアサイト

不動産デベロッパーの専門知識から生まれる洞察力で、不動産投資家としての視点を磨きませんか?関西を中心に不動産開発を行う今村不動産株式会社が、不動産建築から市場分析、押さえておきたい法律、最新テクノロジー活用から実践的なアドバイスまで、あらゆる角度から不動産投資に関する情報をお届けします。あなたの不動産投資戦略を、より確かなものに。