アフターコロナの民泊に期待? 2023年以降の民泊投資を考える

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アフターコロナの民泊に期待? 2023年以降の民泊投資を考える

2010年代中頃からアメリカの民泊サービス「Airbnb」を中心に日本でもブームが到来した民泊。2020年からの新型コロナウイルスの影響による訪日外国人の減少と共に、民泊需要も減少することでブームはいったん収束しました。観光庁が実施したアンケート調査では、コロナ禍による稼働率の低下や厳しい営業規制を理由に、民泊施設の18.8%が事業撤退を決定、もしくは検討しているとの結果も出ていました。ところが、2023年に入ってアフターコロナに向けて環境が変化するにつれ、改めて民泊経営が不動産投資の候補となる可能性が出てきています。さらに、コロナによる環境変化によってリモートワークを観光地やリゾート地で休暇をとりながら行う「ワーケーション」が徐々に市民権を得たことで、ワーケーションの利用のために民泊を利用する人も少しずつ増えています。

 

また、2025年には大阪万博を控え、いま再び不動産投資先としての民泊に注目が集まりつつあります。そこで今回はいま一度、民泊投資についての基本やメリット・デメリットについて整理してみました。民泊についての知識がコロナ前で止まっている方もぜひ読み進めてみてください。

利回りの高さが魅力!?
不動産の民泊投資とは

そもそも民泊投資とは何か。おさらいの意味も込めてまずは民泊の基本から見ていきましょう。民泊とは、住宅やマンション・アパートの一室を宿泊用に貸し出すサービスのことで、海外ではすでに旅行者の宿泊形態のひとつとして普及しています。利用者は外国人観光客を中心に、国内の旅行客や出張中のサラリーマンなどが当てはまります。日本では、外国人観光客の増加による宿泊施設不足の解消や空き家の再利用と地方創生を背景に、ここ最近で急速に注目された不動産投資方法です。

 

2013年12月に「国家戦略特別区域法」が成立、2018年6月15日に施行された「住宅宿泊事業法(民泊新法)」によって、民泊営業を届け出のみで行えるようになったこともあって、全国で民泊経営件数は増加しました。最新の2023年3月時点での住宅宿泊事業の届出状況は32,964件となっており、実はコロナ前の数字よりも高くなっています。

 

https://www.mlit.go.jp/kankocho/minpaku/business/host/content/001611722.pdf

 

そんな民泊投資ですが、運用によっては一般的な不動産投資よりも高い利回りを得ることが可能だと言われています。一般的な不動産投資(不動産を購入して貸し出す)の実質利回りは、大体4〜6%といわれています。もちろん、利回りは不動産の条件によって変わるため一概にはいえず、あくまでも目安です。新築・中古などの条件によっても異なりますし、そもそもの利回りを算出する分母自体が物件の購入価格となりますので、不動産市場の景況感によっても利回りは大きく左右されます。

 

利回りに関して詳しく解説している記事はこちら

 

対して、民泊投資の実質利回りですが、上手くいけば一般的な不動産投資の実質利回りのおよそ2〜3倍高くなると言われています。その理由は単純で、賃貸住宅の不動産投資の収益は1ヶ月の家賃なのに対し、民泊投資の収益は利用者の宿泊料になるからです。どんな宿泊施設であっても、1泊あたりの利用料が1ヶ月分の家賃の日割りより安くなることはないでしょう。たとえば宿泊料が1万円、年間の稼働率が50%の物件であれば、月間の売上は「1万円 ✕ 30日 ✕ 0.5 = 15万円」となり、家賃10万円の物件よりも高い売上となります。

 

この理由から、民泊サービスなどの手数料や経費などを差し引いた後でも、アパートやマンションなどの居住用不動産投資よりも高い利回りを実現できる可能性があると言えるのです。もちろん、これは宿泊の稼働率を高く保てて初めて実現できる数値です。その意味では、家賃収入を得る不動産投資よりも市場環境に大きく左右される投資であることを忘れてはなりません。

 

 

不動産投資としての民泊投資
3つの経営パターン

 

上記で述べた高い利回りは「自ら民泊を事業として行う」場合ですが、ひとこと「民泊投資」と言ってもその種類はさまざまで、大別すると投資パターンは3つに分類することができます。少し詳しく見ていきましょう。

 

① オーナーとして自ら民泊サービスを提供する

ひとつ目はいちばん身近な投資方法です。所有している不動産または新たに購入した不動産で自らがオーナーとなって民泊サービスを提供するケース、つまり民泊を事業として行うパターンです。新たに不動産を購入する場合は初期費用がかかりますが、売上は全て自らの収益になるため、順調に経営できれば結果的にリターンも大きくなります。ただし、不動産管理や宿泊客対応など事業として行う業務も多岐に渡るため、不動産所有者として必要な知識を身につける、民泊における接客の基礎を習得するなど、経営準備をしっかり行うことが大切になってきます。

 

② オーナーとして他者に物件を貸し出す

ふたつ目は、所有している不動産または新たに購入した不動産をオーナーとして他者に貸し出し、民泊サービスを提供するケースです。この場合の収入源は家賃となるため、民泊施設としての稼働状況を問わず安定した収益を得られるのがメリットです。また、不動産に「民泊経営の許可が下りている」という付加価値がついているため、通常の賃貸物件よりも高値で貸し出せる場合が多いのも魅力のひとつです。ただし、これは一般の投資物件にも言えることですが必ずしも借り手がつくとは限りません。不動産を借りてもらって初めて収益を得られるため、借り手を探すことから始める必要があります。

 

③ 物件を借りて民泊サービスを提供する

最後は、厳密には不動産投資ではありませんが、不動産を所有しているオーナーから物件を借りて、民泊サービスを提供するケースです。この場合、自ら不動産を購入する必要がないため、初期費用を大幅に抑えることができます。また、民泊施設としての稼働率を高められれば収益を増やすことも可能でしょう。さらに、民泊経営の代行業者を活用すれば、自ら管理する手間も省くことができます。ただし、毎月一定の家賃を支払わなければならず、経営が不調だと収益を満足に得られない可能性があるため、その点はリスクになり得ます。

 

 

不動産投資としての
民泊投資のメリット

民泊投資のメリットには、まず「収益性が高い」という点が挙げられます。宿泊料を「1人1泊〇〇円」と設定することができるため、同じ条件の部屋を通常の賃貸した場合よりも多くの利益を得ることが可能なので、一般的な不動産投資に比べて民泊投資のほうが実質利回りが高いと言われています。民泊施設の稼働率が高ければ、同じ不動産を貸し出す場合に比べて、より多くの収益を得ることができます。

 

「物件の取り壊しやリノベーションを容易に行える」という点もメリットでしょう。一般的な不動産投資の場合は借り手と年単位の賃貸借契約を締結します。そのため、もし契約期間中に取り壊しやリノベーションを行うとなれば、退去の交渉をしたり立退料を支払う必要がありますが、民泊の場合は賃貸借契約を締結する必要がないので、比較的容易に物件に手を加えることができます。修繕やリノベーションに関しても普通の賃貸物件のように長期間居住するわけではないので内装や設備の劣化が少なく、原状回復の頻度も少なくて済み、修繕費用をおさえられるでしょう。

 

また、民泊の宿泊ニーズの第1位は「立地のよさ」であり、宿泊客にとって築年数は大きな懸念材料になることが少ないため、築古物件の再生事業としても検討できるのも魅力です。

 

 

不動産投資としての
民泊投資のデメリット

まず、民泊を営業するには設備や内装を整えるほか、自動火災報知機や誘導灯などの消防設備の設置が必要な場合があります。各自治体窓口への届出や消防署での確認などが必要になりますが、これら申請の準備や手続きに時間がかかるのがデメリットとして挙げられるでしょう。

 

また、これはインバウンド事業全般に言えることではありますが、いくらコロナが鎮静化しているからといっても今後の訪日外国人の増加は確実ではなく、ギャンブル性が高い事業展開となります。民泊のターゲットを日本人観光客にシフトすることも戦略のひとつになりますが、コロナ禍で日本人向けの観光業も大きな打撃を受けた点からも、リスクが大きい投資対象と言えるでしょう。

 

2018年の民泊新法によって年間の稼働日数が制限されたことからも、今後も民泊事業は法規制に左右される面が大きいと考えられます。新型コロナウイルスの影響により在宅時間が増えたことで、近隣の住民同士でのトラブルが増加したと言われています。今後さらなる法改正が行われれば、当初予定していた事業計画を見直さざるをえないこともあるかもしれません。

 

 

「特区民泊」を把握していないと
民泊投資は失敗する!?

 

このようにメリットも大きくコロナ後も需要が見込まれる民泊投資ですが、投資をする際365日営業できる「特区民泊エリア」以外は少し慎重に判断したほうがよいかもしれません。「特区民泊エリア」とは、国家戦略特別区域法に基づく旅館業法の特例制度を活用した民泊のことを指します。特区民泊の正式名称は「国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業」ですが、特区(特別区)における民泊事業として「特区民泊」と呼ばれています。

 

詳しくはリンク先を参照ください。

https://www.kantei.go.jp/jp/headline/kokkasenryaku_tokku2013.html

 

実は、前述の2018年6月に施行された民泊新法では年間180日だけ民泊営業が可能と規定されています。これが民泊で有名な180日ルールです。この民泊新法によって、従来の旅館業法などの手続きよりも比較的簡単に民泊の運営が認可されるようになったのですが、一方で営業制限が設けられています。つまり、日本全国どこでも毎日宿泊営業が可能というわけではないのです。さらに、各自治体で180日以下の日数に制定することも可能となっているため、どこの地域で営業するかによって営業可能日数が異なってきます。自治体の制限は、大きく分けて4つのパターンがあります。

 

1)日数制限がない自治体
営業日数規制を条例で上乗せしていない自治体

 

2)用途地域による日数制限がある自治体
住居専用地域での平日営業の制限がある地域。
休日のみの営業とすると年間120日稼働となります。

 

3)用途地域・不在型による日数制限がある自治体
用途地域による制限と不在型による制限がある地域です。
不在型の場合は基本平日営業が不可となっています。

 

4)区内全域で平日の営業を制限している自治体
一番規制が厳しい自治体です。地域関係なく全域で平日営業が不可のエリアです。

 

つまり、いくら高稼働で高い利回りを見込めそうだとしても、エリアによっては年間の収支に上限がかかる可能性があるということです。自分がどの地域で民泊を営業しようとしているのか?年間上限何日まで営業できるのか?運営しようとしている物件に自治体の制限がかかっていいないか?を確認のうえ、年間営業日数制限の対策を考える必要があります。

 

ちなみに、2023年7月現在、特区民泊が可能な自治体の一覧は下記となります。

 

【国家戦略特区の一覧】
東京圏(東京都、神奈川県、千葉県成田市、千葉県千葉市)、関西圏(大阪府、兵庫県、京都府)、新潟県新潟市、兵庫県養父市、福岡県福岡市、福岡県北九州市、沖縄県、秋田県仙北市、宮城県仙台市、愛知県、広島県、愛媛県今治市

 

 

不動産投資で民泊経営を
成功させるポイント

 

高い利回りが魅力の民泊投資ですが、一般的な賃貸物件への不動産投資とは違った考えや注意が必要なことがわかったと思います。最後に、これから民泊投資を検討される方向けに、民泊投資で最低限押さえておくべきポイントをご紹介しておきます。

 

①不動産投資・民泊投資について理解を深める

なにより不動産投資・民泊投資について理解を深めることが大切です。民泊投資は一般的な不動産投資とは違ったポイントも多いため、今回ご紹介した利回りやメリット・デメリットに加えて、キャッシュフロー(お金の流れ)、物件を購入・売却する流れ、起こり得るリスクなどを押さえておきましょう。

 

②綿密な収支をシミュレーションをする

民泊投資を成功させるには、収支シミュレーションが何より大切です。良い投資用物件が見つかったとしても、いざ民泊施設として営業したときに赤字となってしまっては意味がありません。先の「特区民泊」のエリアや各都府県や地方自治体の制度も理解したうえで、「この物件で民泊を成立させられるか」「満足できるほどの収益を得られるか」などを事前によく検討すべきです。

 

③運営後の対応を準備しておく

事前に近隣住民に説明し理解を得ておく、宿泊客に利用時のルールを知らせておく、苦情には迅速に対応するなど、民泊でトラブルになりやすいポイントをあらかじめ調べ、その対策を立てておく必要もあります。また、民泊の利用者のほとんどがインターネットで民泊物件を探すため、民泊運営は口コミがとても大切になってきます。「物件をきれいに保つ」「宿泊者に寄り添った対応をする」「ネット上の情報と実物に差がないようにする」といった点を心掛ける必要があるでしょう。

 

 

コロナ後の市場動向と法整備が
民泊投資の成否を分ける

 

民泊は不動産投資方法のひとつとして、通常の賃貸経営よりも高い収益性が期待できます。特に新型コロナウイルス感染症が収束傾向にあるいま、再び大勢の観光客が訪れるようになれば、民泊の需要が再燃し成長が見込まれる分野でもあります。ただし、押さえておくべきポイントも多いため、不動産投資のひとつとして民泊経営を検討する際はぜひ当記事を参考にしてください。

 

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