ホテル投資は不動産投資で検討できる? ホテル投資の魅力と注意すべきポイント
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ホテル投資と聞くとどんなイメージをお持ちでしょうか。おそらく多くの投資家や投資企業の方は「新型コロナウイルスで打撃を受けている業界だから危ない」という印象を抱かれるのではないでしょうか。実際、リゾート地に建てられているホテルやマンションはインバウンドや国内観光客の減少からかなり厳しい状況と言えます。一方で「コロナ後は国内外の観光ニーズが再拡大してホテルの経営状況も回復する」と予測し、経営が厳しい状況下のホテルを今のうちから安価で購入してコロナ後に経営を立て直すという計画のもと、ホテルを不動産の投資先に選ぶという先手を売った戦略で投資を行う動きもあります。
不動産投資の投資先の種類はマンションやアパートに代表される居住用不動産をはじめ、事務所や店舗などの事業用不動産、駐車場や駐輪場など多岐に渡りますが、ホテル投資は各投資先のなかでも規模・必要資金・収益などがトップクラスに大きく、不動産投資を代表する投資先であると呼ばれることがあります。ただし、一般の投資家にとってはハードルが高いと考えられています。
これらを踏まえた上で、今回は不動産投資のなかでもホテル投資に焦点を当て、ホテル投資の方法やメリット&デメリットについて解説したいと思います。新型コロナウイルスによる影響やコロナ後の展望を含め、今後の投資の参考になれば幸いです。
観光業やホテル業
新型コロナ前までの状況
ホテル投資についてご説明する前に、重要な業界動向について少し触れておきましょう。日本政府観光局のデータによると、日本に訪れる外国人の数は2012年以降右肩上がりで上昇。2019年に、訪日外客数は統計市場最も多い3,188万人超を記録していました。さらに観光庁は、新型コロナの影響がなければ2020年には訪日外国人数4,000万人、2030年には6,000万人を超えるというロードマップを作成していました。
「ヒジット・ジャパン・キャンペーン」「LCCの拡大」「ビザの緩和」など要因は様々ですが、その流れを受けて宿泊施設不足解消のため、民泊投資・ホテル投資も加速していました。2015年に「みずほ総合研究所」が発表した「インバウンド観光と宿泊施設不足」の資料によると、特に東京・近畿圏において宿泊施設不足が顕著にみられています。その試算によると、2020年までに必要と見込まれる客室数が、当時計画されていた新規オープンの客室数を上回っているという結果でした。
コロナ禍で打撃を受けるホテル業界
それでもホテル投資が魅力的な理由
インバウンド拡大という市場環境も合間って、コロナ以前、ホテル投資は遊休不動産の活用、新たな不動産購入によるホテル運営、既存ホテルの購入など、どの手法であってもある程度有望な投資とされてきました。需要の増加に加え、長期的な収益性の確保が可能で節税効果も見込める優良な投資先だったのです。そこに来ての新型コロナウイルスによる影響は大きいのが実際のところ。コロナ禍が去ってもすぐにインバウンド需要が戻るかというと、相手国の状況も相まって不透明感は否めません。
ただし、観光庁の調査によると、実は2019年(コロナ禍以前)の宿泊需要の8割は日本人観光客だったという結果も出ています。GoToキャンペーンで市場が活性化することはすでに実証済みであり、同様の取り組みとして現在行われてる全国旅行支援が期間延長されるというニュースも11月25日の閣僚会議後の会見で発表されました。コロナ禍が沈静化すれば、宿泊需要が回復することは想像に難くないと言えるのではないでしょうか。
むしろ、ホテル業界が苦しんでいる今こそ、ホテル投資のチャンスだと考え出している投資家も多くいます。実際のところ、中国の投資マネーが日本のホテル投資へどんどん流れているのです。10月31日に開催された不動産サービスのジョーンズラングラサール(JLL)主催の「不動産&ホテル投資フォーラム2022」でも、ホテル需要について順調な回復を辿るという見方が多くの人から寄せられました。
現在の市場を鑑みてホテル投資に消極的になる投資家が多いからこそ、逆に今からホテル投資を行うことで大きなメリットを掴める可能性もあるかもしれません。
ホテル投資はリスキー?
ホテルに投資する魅力とは
1_不動産投資の中でも将来性が高い
コロナ後を見越した場合、海外渡航制限が完全に解除されればインバウンド需要も復活すると予想されており、将来的には多くの宿泊需要が見込めると考えられています。観光庁のデータにもあった通り、コロナ以前は宿泊施設不足が国を挙げての大きな課題だったこともあり、コロナ収束後に向けてホテル投資の将来性は高いと考えられます。経営破綻に陥った物件は競売に掛けられることもあり、今なら平時より安い値段で物件を買い取ることも可能かもしれません。
2_好調であれば収益性が高い
ホテル以外、例えばアパートやマンションなどの居住用不動産投資、事務所や店舗などの事業用不動産投資、いずれにおいても空室リスクは付き物といっても過言ではありません。しかし、ホテル投資の場合は宿泊客が集客できる環境が揃っていれば、空室リスクに悩まされることなく安定した宿泊料を収入として手に入れることができます。客室稼働率さえ高ければ非常に高い収益が見込めるのです。インバウンド旅行客の中でも注目される富裕層はもちろん、リゾートのレジャーや保養が目的の宿泊者は客単価も高い傾向にあるため、リピーターを獲得することで盤石な経営状態が築けます。
3_大幅な節税対策になり得る
ホテルの建設費用やエレベーターなどの設備は、減価償却費として経費計上することが可能です。ホテル投資に限らず不動産投資は経費計上できる項目が多いため、課税対象額を減らすことで節税できるというメリットがありますが、その中でも初期投資が大きいホテルは単純にかなりの金額を経費計上できることになります。また、相続税対策としても有効です。課税対象となる不動産評価額は、不動産そのものの購入金額ではなく路線価や固定資産評価額により決定されます。時価の7割程度で評価されることが多いため、現金での相続よりも相続税が低くなるという節税効果を得ることが可能です。
魅力的なホテル投資
考えられる5つの落とし穴
1_多額の初期投資が必要になる
ホテル経営向きの物件を購入するには億単位の資金が必要となり、不動産投資初心者にとってはハードルが高すぎる規模感での投資となってしまいます。賃貸やサブリースという方法もありますが、いずれも集客に強い立地、建物、設備が必要になるため、初期投資は高額になります。
2_ランニングコストが掛かる
物件規模が大きくなりがちで、客室はもちろんその他のスペースや施設なども備える必要があるホテル物件の場合、維持管理費が非常に高くなります。必然的にランニングコストが大きく掛かるため、宿泊客の集客がうまくいかないと即座に赤字転落して経営難に陥いるリスクが往々にしてあります。また、多様な設備があるため予想外の修繕が必要となるケースもあります。多額の修繕費によって資金がショートするリスクを踏まえると、よほどの余剰キャッシュがない投資家には手を出し辛い投資対象だと言えます。
3_経済状況に左右される
現在開催されているワールドカップやオリンピックなどのイベント、円高・円安などの経済状況で宿泊需要は常に大きく左右されます。また、コロナウィルスのような不測の事態が起きた場合にも、大きな影響を受けやすい投資手法でもあります。次項の経営スキルにも言えることですが、単純に宿泊施設としての機能にとどまらず、昨今注目されるテレワーク用のデイユースなど宿泊外での集客なども検討しながら、年間を通して集客できるような対策・工夫が必要になってきます。
4_必要な経営スキルのレベルが高い
マンションやアパートといった生活に根差した不動産の場合は経済状況による需要変化は少ないですが、ホテルに代表されるリゾート施設の用途は娯楽や保養であり、宿泊客を呼ぶためにはニーズを掘り起こして集客するための宣伝が必要となります。また、口コミが重視される世界でもあるので、利用客へのサービスの質を高く保つ必要があり、フロントの外国人対応など接客サービスにも力を入れる必要があります。ホテル運営の経験やスキルがゼロの状態からスタートするのは非常に困難で、初心者が一から手掛けることは避けたほうが良いと言えます。
5_転用が難しい
ホテル投資は売却が難しい点もデメリットです。なぜなら、建物自体が特殊であり、間取りや設備など全体がホテルとして機能するために造られているからです。いざホテル投資を行って経営が難しいからといって簡単に用途変更できるものではありません。そのため、単純に収益物件を保有したいという人にとっては、その特殊性ゆえ扱いづらくなる可能性が考えられます。自身で運営しない場合はコンサルティング先や運営委託会社など体制を整えてスタートすることが大切です。
ホテル投資は方法が豊富!
ホテル投資の6つの投資スタイル
ここまでは観光業界の動向やホテル投資のメリット&デメリットについて考えて来ましたが、ここからはもう少し詳しくホテル投資について解説していきます。実はホテル投資と一言に言っても、物件の取得方法や投資の方法の違いから様々なスタイルがあることをご存知でしょうか?
いままで紹介してきたメリット&デメリットは、いわゆるホテル不動産を投資先として「取得する」場合の事例でした。ただ、ホテル投資の場合はそれ以外にも投資方法が多岐に渡るのです。まずは簡単に6種類の投資スタイルに分けてご紹介します。それぞれリスク・リターン・必要資金・参入障壁などが大きく違うので、内容を把握した上で自身に合ったスタイルを探ってみて下さい。
①ホテル物件の購入
不動産投資として最もイメージしやすいのが、既存のホテルを不動産投資用物件として購入して、運営・経営により収益を得る方法です。不動産としての価値が上がれば売却益を得られる可能性もあります。実際にホテルを購入して運営するため、多額の初期投資資金と経営スキルが必要となるのがデメリット。とはいえ、すでにあるホテルを活用するため、設備投資や大規模な修繕・リフォームを省けることや、すぐにでも運営をスタートできるため収益化までの期間が短いことが大きなメリットだと言えます。この場合は、優良物件をいかに取得できるかがポイントとなるのは言わずもがなです。
②別物件を購入してホテルへ改築・改装
オフィスや店舗といった別の用途で活用されていた物件を購入して、改築・改装・リフォームを施してホテルへと用途変更を行う方法もあります。①のホテル物件購入に比べてより大きな初期投資や労力が必要にはなりますが、新築でホテルを購入するよりもコストを削減できることや、収益化までの期間を短縮できることがメリットだと言えるでしょう。ただし、物件の種類・状態・規模といった条件次第では、ホテル転用するために想像以上の費用が発生する場合もあるので要調査です。
③ホテル物件を新たに建設
ホテルの新規建設は最も多額の資金・時間・労力を投下する必要がある方法でしょう。成功すれば大きな収益を生むホテルにできる可能性がありますが、初期投資を回収するまでにも長い時間を要するため、ハイリスク・ハイリターンなホテル投資スタイルです。参入は容易ではないため、新規でホテル事業の確立を目指すような法人の投資に限定されます。
④ホテルコンドミニアム
ハワイや沖縄などのリゾート地・観光地等のホテルの一室をオーナーから借り受けて所有し、自身が使用しない時に貸し出して収益を得るという方法。投資だけでなく自分自身でも利用できるのが大きな特徴です。ホテル1棟投資ではないため個人投資家でも参入しやすく、空室のリスクが少ないことが大きな利点でしょう。ただし、収益はホテルオーナーと分け合う形を取るため、一般的な不動産投資よりも収益性は低くなります。
⑤ホテルリート
不動産投資信託のひとつで、ホテルや旅館の投資物件に特化したものをホテルリートと言います。投資家から集めた資金で物件を購入し、賃貸して得られた収入の中から費用を差し引いたものを分配金として投資家に還元する方法です。実際の不動産物件を取り扱うホテル投資とは異なり、運用・維持・管理はプロが代行するので、小額からでも手軽に始められるのがメリットだと言えます。その反面、他のホテル投資と比べるとリターンは少なくなります。
⑥ホテル投資のクラウドファンディング
ホテル投資においてもクラウドファンディングは活用されています。取り扱う不動産の形態によっていくつかのタイプに分かれており、自分の投資スタイルに合ったものを選べます。開業資金としてクラウドファンディングが行われその運用益が還元されるタイプや、中古ホテルを購入して転売や運用利益を配当するタイプがあります。ホテルリートと同じく運用は管理会社が行い、運用収益や売却益が発生すればリターンを得ることができます。こちらもリターンは通常のホテル投資に比べて少額になります。
ホテル運営とホテル経営
ホテル投資後のスタイルにも注目
ホテル投資の場合、その投資スタイルと合わせて検討が必要なのが物件取得後のホテルをどうするか。つまり、ホテルの経営形態についてです。従来、ホテルは土地建物の所有者と運営者、経営者の3つを同じ事業者が行っていました。それが時代と共に3者が分業されるようになってきて今日に至ります。それを受けて、ホテル事業に対する投資の形態も、「ホテル運営に対する投資」と「ホテル経営に対する投資」に分かれています。
まず、ホテルの経営方式については、他の事業用不動産の投資と同様に大きく2つに分類できます。
「単独経営型」
従来からあるホテル運営の原則的な形態です。ホテルの所有者と運営者、経営者の3者の主体が一致しているケースで、昔から堅実に経営しているホテルや、地方の温泉旅館やリゾート地のペンション、民宿などに多いと言えます。ホテル所有者・運営者・経営者が一体である単独経営型の場合、経営に関する意思決定が速く、金融機関からの社会的信用度が高いのが特徴ですが、経営と運営が一体化しているため運営に対する不信がダイレクトにホテル経営に響くデメリットがあり、資金ショートが起きれば経営を継続できなくなることも想定されます。
「チェーン経営型」
ホテルの所有者と運営者がそれぞれ別で、運営者が所有者から建物を賃貸してホテル経営に携わる形態です。ホテル経営によって得られた利益は所有者ではなくホテル運営者のものとなり、所有と経営が明確に分離されているのが最大の特徴だと言えるでしょう。この場合、投資家=ホテル所有者とすると、その収益は賃借人であるホテル運営者から支払われる賃料のみになります。投資家側からすればホテル経営に関わらずに安定した賃料収益を得られる点がメリットと言えます。
次に、ホテルの運営形態についてですが、こちらは大きく3つの形態が考えられます。
「所有直営方式」
前述の「単独経営型」の場合は基本的にこちらの所有直営方式です。つまり、ホテルの所有者自身がホテルの経営と運営を行う方式です。単独経営型でご紹介しましたが、この所有直営方式は金融機関から融資を受けやすく、社会的信頼度が高い特徴があると言われている一方で、ホテルの運用如何が経営に直結するため、一定のホテル経営ノウハウがなければ長期的に継続して収益を上げるのは難しい側面も有しています。
「リース方式」
リース方式は、ホテルの運営会社が所有者からホテルを借りて経営を行う形態です。運営会社は所有者に毎月のリース料金を支払います。前述の「チェーン経営型」の場合の運営形態のひとつです。所有者側はホテル経営に関わらずにリース料(賃料)を得ることが可能で、ホテル運営者側も大きな初期投資をせずにホテル運営に参画できることから、効率的に事業を進めることが可能です。
「マネジメント・コントラクト方式」
マネジメント・コントラクト方式とは、ホテルの所有者と経営者が一体となってホテル運営会社を設立する形態です。経営や運営はホテル運営会社が全て行い、ホテル所有者はホテルの売り上げから収入を得るという形になります。この形態はさらに3つに区分されるのですが、テーマの本筋とは離れるので割愛します。
以上のように、ホテルの投資スタイルも複数あり、実際に物件取得後の運用についても選択肢があるのが、ホテル投資が難しく初心者には向かないと言われる所以でしょう。初期投資が多いため、失敗した時の損失も大きくなってしまうのがホテル投資の特徴。リスクとその回避方法を深く理解するとともに、もしホテル投資にチャレンジされる場合は実績や知見のある不動産会社をパートナーにつけることが大切だと言えます。
今後の市場を見据えて
ホテル投資はありかなしか
アフターコロナを見据えていまからホテル物件の確保や経営の準備を整えておけば、大きなリターンを得られる可能性があります。しかし一方で市場環境や経済状況に大きく左右されるハイリスク・ハイリターンな投資であること、多額の初期費用や高度な知識・スキルが必要となる難易度の高い不動産投資であることから、緻密な計画を立てて進める必要がありますし、どちらかと言えば法人の事業投資としての側面が大きいとも言えるでしょう。
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