大阪市のカップル向け賃貸マンションの募集家賃が、2026年7月時点で9カ月連続の最高値を更新しました。その一方で、22カ月にわたって最高値を更新してきたシングル向けは、24カ月ぶりに前月比で下落しています。同じ大阪市の家賃でも、部屋の広さによって動きが分かれ始めているのです。
新築アパート投資のご相談では、「大阪の家賃は上がっているから、新築を建てればすぐに埋まる」という期待を耳にすることも増えました。しかし、家賃上昇の恩恵はどの部屋にも等しく届くわけではありません。
結論からお伝えすると、2027年の大阪で新築アパートが狙うべきは、20〜30代の社会人単身者とDINKs(共働きで子どものいない世帯)です。単身者向けを建てればよいという話ではありません。家賃の上昇を受け入れられる収入があり、なおかつ新築を選ぶ理由を持っている層に絞り込むことが、家賃上昇の追い風を収益に変える条件です。
本記事では、大阪の家賃がどこまで上がったのかを確認したうえで、需要を生み出している「人と世帯」の変化、2027年に向けた見通し、そして単身・DINKs・ファミリーそれぞれの入居者層の特徴を、不動産投資の目線で順に整理していきます。
目次
大阪の家賃はどこまで上がったのか

アットホームの調査によると、2026年7月時点の大阪市のマンション平均募集家賃は、シングル向け(30㎡以下)が7万3,363円、カップル向け(30〜50㎡)が11万5,155円でした。LIFULL HOME’Sの2025年総括[AS1] では、1年間でシングル向けが14.2%、ファミリー向けが18.9%上昇したとされています。
上昇は2026年に入っても続いています。アットホームの2026年6月の調査[AS2] では、大阪市のマンション募集家賃はシングル向けから大型ファミリー向けまで全面積帯で前年同月を上回りました。同じ調査で京都市や神戸市も全面積帯で前年同月を上回っており、家賃上昇は大阪市だけでなく近畿圏の主要都市に広がっています。
ただし、冒頭でふれたように中身には変化の兆しがあります。シングル向け(30㎡以下)は24カ月ぶりに前月比で下落した一方、カップル向け(30〜50㎡)は8カ月連続で最高値を更新しています。狭い単身向けの上昇が一服し、少し広めの部屋の家賃がまだ伸びている。この差が、後半の入居者層の議論で重要な意味を持ちます。
[AS1]参考:LIFULL「LIFULL HOME’Sマーケットレポート 2025年総括版」
[AS2]参考:アットホーム「全国主要都市の賃貸マンション・アパート募集家賃動向(2026年6月)」
https://www.athome.co.jp/corporate/news/data/market/chintai-yachin-202606/
家賃上昇を支えているのは「世帯の増加」

家賃の上昇を需要の側から見ると、鍵になるのは人口ではなく世帯の数です。
大阪市が2026年9月に公表した令和7年国勢調査の人口等基本集計[AS1] によると、2025年10月時点の大阪市の人口は280万5,371人で、2020年から5万2,959人、率にして1.9%増えました。これに対して世帯数は8.3%増と、人口の4倍を超えるペースで増えています。1世帯あたりの人数は1.87人から1.76人へと縮みました。部屋を借りる単位である世帯が増えれば、人口の伸び以上に賃貸需要は増えます。
なかでも目立つのが単独世帯で、同じ基本集計では93万1,399世帯と、5年間で18.7%増えています。一般世帯に占める割合は58.7%で、大阪市の世帯の6割近くが一人暮らしという状況です。
人の流れも追い風です。2024年の大阪市の転入超過数は1万6,090人で、東京都区部に次ぐ全国2位でした。20代の人口は2015年の32.4万人から2024年には38.8万人まで増えています。進学と就職で大阪に集まる若年層が、賃貸需要の中心を押し上げている構図です。
[AS1]参考:大阪市「令和7年国勢調査における大阪市の人口等基本集計結果を公表します」(2026年9月29日)
https://www.city.osaka.lg.jp/hodoshiryo/toshikeikaku/0000683542.html
2027年の大阪賃貸市場はどうなるか

ここからは、将来の家賃を断定できるものではないですが、上記のデータをもとにした見通しです。
需要面では、単独世帯の増加と若年層の転入超過という流れが、1〜2年で反転する材料は見当たりません。うめきた2期のグラングリーン大阪は2027年度の全体完成を予定し、夢洲では2030年秋頃の開業を目指す統合型リゾートの整備が進んでいます。雇用と人の流入が続く前提は、当面崩れにくいと考えられます。
供給面では、建築費と人件費の上昇が続いており、新築の賃貸住宅が急増するとは考えにくい状況です。新築の建築コストが上がれば、それを回収するために新築の募集家賃が上がり、周辺の既存物件の家賃も引き上げられやすくなります。
こうした点を踏まえると、2027年も大阪市の家賃は緩やかな上昇基調が続く可能性が高いと考えます。ただし、2025年のような二桁の上昇が続くとは限りません。シングル向けの上昇が一服したように、家賃は入居者の支払い能力に近づくほど伸びが鈍ります。これからの家賃上昇は「どの部屋でも上がる」局面から「支払える層が住む部屋だけが上がる」局面に移っていくと見るのが自然でしょう。
入居者層別に見る、大阪の賃貸需要

単身者 ―「数は最大」でも「誰でもいい」わけではない
単身者は世帯の6割近くを占める最大の需要層です。しかし、ひと口に単身者といっても、学生、20代の新社会人、30〜40代の単身社会人、高齢の単身者では、払える家賃も求める部屋もまったく違います。
新築アパートと相性が良いのは、家賃の上昇を受け入れられる収入がある20〜30代の社会人です。この層は築年数や設備、防犯性を重視し、通勤時間を短くするためなら家賃を多少上げることもいといません。一方で、学生を主な対象とする18〜20㎡前後の狭いワンルームは、既存物件の供給が多く、家賃を上げにくい分野です。家賃上昇の恩恵を受けにくいばかりか、築年数の経過とともに賃料の下落圧力も受けやすくなります。
在宅勤務の定着で「寝るだけの部屋」から「働ける部屋」へ需要が移ったこともあり、新築なら25㎡前後の1Kに、デスクを置ける余裕や独立洗面台を備えるくらいの仕様が、競合物件との差になります。
DINKs ― 家賃上昇時代にもっとも狙い目の層
今回もっとも注目したいのがDINKsです。前述のとおり、大阪市では30〜50㎡のカップル向けの家賃が最高値を更新し続けています。これは、二人分の収入があり、家賃の上昇を受け入れやすい層の需要が強いことを示しています。
分譲マンション価格の上昇で「買うより借りる」を選ぶ共働き世帯が増えていることも、この層の賃貸需要を厚くしていると考えられます。DINKsは通勤のしやすさ、宅配ボックス、収納量、そして二人がそれぞれ在宅勤務できる間取りを重視する傾向があります。
新築アパートで狙うなら、30〜40㎡台の1LDKやコンパクトな2DKが中心になります。この面積帯は「少し広い部屋に住みたい単身者」の需要も取り込めるため、入居者層を一つに絞らずに空室リスクを分散できるのも利点です。
ファミリー ― 需要はあるが、アパートでは慎重に
ファミリー向けの家賃も上がっていますが、新築アパートで正面から狙うにはハードルがあります。ファミリー層は学区、公園、スーパーとの距離、遮音性を重視し、分譲マンションや戸建て賃貸と比較されやすいためです。1棟アパートで60㎡を超える住戸を並べると、戸数が減って利回りも下がりやすくなります。
また、ファミリー層は住宅を購入して賃貸市場から抜けていく層でもあります。人口が増えている区であっても、増えているのが持ち家を取得したファミリーであれば、賃貸需要には結びつきません。ファミリーを取り込むなら、1LDK中心の構成に2LDKを一部組み合わせ、DINKsが子どもを持った後も住み続けられる「住み替えの受け皿」として設計するのが現実的です。
新築アパートの企画で押さえたいこと

間取りは「1K+1LDK」の組み合わせで考える
ここまでの分析を企画に落とし込むと、25㎡前後の1Kと30〜40㎡台の1LDKを組み合わせる構成が基本形になります。単身者とDINKsという二つの層を同じ建物で受け止めることで、どちらかの需要が弱まった局面でも稼働率を保ちやすくなります。
なお大阪市には「ワンルーム形式集合建築物に関する指導要綱」があり、専用面積35平方メートル以下の住戸を含む集合住宅を新築する際には事前協議が必要です。住戸の専用面積は18平方メートル以上といった基準もあるため、計画の初期段階で規制を織り込んだ戸数・面積設計をしておくことが欠かせません。
エリアは「都心へ20分圏内の周辺区」から検討する
入居者層が決まれば、エリアの見方も変わります。社会人単身者とDINKsにとって重要なのは、梅田・本町・難波といった業務集積地への通勤のしやすさです。都心区は需要が厚い一方で土地価格が高く、新築アパートでは利回りを確保しにくいのが実情です。
そこで候補になるのが、都心へ電車で20分圏内にあり、土地価格がまだ手の届く範囲にある周辺区です。城東区、都島区、東成区、淀川区などは都心へのアクセスが良く、社会人の通勤圏に入ります。
区ごとの家賃・地価・人口データの見方は、「【2026年最新】大阪市で不動産投資におすすめの区は?家賃・地価・人口データで徹底比較」で詳しく解説しています。
大阪の賃貸市場と新築アパート投資についてよくある質問

Q.大阪の家賃は2027年も上がり続ける?
世帯数の増加と若年層の転入超過が続いており、建築費の上昇で新築供給も急増しにくいことから、緩やかな上昇基調が続く可能性は高いと考えられます。ただし2025年のような大幅な上昇が続く保証はなく、単身向けのように伸びが一服する面積帯も出てきています。
Q.単身者向けとDINKs向け、どちらを優先すべき?
どちらか一方に絞るより、1Kと1LDKを組み合わせて両方を受け止める構成をおすすめします。そのうえで比率を決める際は、その駅の周辺で30〜50㎡の募集物件がどれだけ少ないか、つまり競合の薄さを確認してください。
Q.ファミリー向けの新築アパートは避けるべき?
避けるべきとまでは言えませんが、分譲マンションや戸建て賃貸との競争になるため、学区や生活利便性で明確な強みがある立地に限って検討するのが無難です。た物件は空室が埋まりやすく、収益還元でも評価されます。修繕費は削るコストではなく、出口の価格を守るための投資です。
エリアの次は「誰が借りるか」で選ぶ
大阪市の賃貸市場は、単独世帯の増加と若い社会人の流入に支えられ、近畿圏の他都市とともに家賃の上昇が続いています。しかし家賃上昇の恩恵は、すべての部屋に等しく届くわけではありません。上昇が一服し始めた狭い単身向けと、最高値を更新し続けるカップル向けの差は、そのことを示しています。
新築アパート投資で大切なのは、エリアを選んだあとに、その街で誰が、いくらの家賃で、どんな部屋を求めているのかを具体的に描くことです。入居者の顔が見えないまま建てた部屋は、家賃上昇の時代でも選ばれません。まずは検討している駅の周辺で、1Kと1LDKの募集家賃と募集件数を並べるところから始めてみましょう。
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