新築アパートの計画で、最後まで迷いやすいのが間取りです。1Kにして戸数を増やすか、1LDKでゆとりを持たせるか、2LDKで長く住んでもらうか。同じ土地でも、どの間取りを選ぶかで家賃収入も、空室リスクも、将来の売りやすさも変わります。
結論からお伝えすると、どの間取りにも「どこでも通用する正解」はありません。正解は、その土地の周りに誰が住んでいて、誰が住みたがっているかで決まります。表面利回りだけを見ると戸数を稼げる1Kが有利に見えますが、入退去のコストや競合の多さまで含めると、その差は思ったほど大きくないこともあります。
本記事では、1K・1LDK・2LDKそれぞれの特徴と向いている入居者、同じ土地で比べたときの収益性の違い、そして間取りを決めるときの考え方を、土地から企画・開発するデベロッパーの視点で解説します。
目次
新築アパートの収益は「間取り」で大きく変わる

中古アパートを買う場合、間取りはすでに決まっています。投資家が選べるのは「この間取りの物件を買うかどうか」だけです。一方、新築アパートでは、土地に対してどんな建物を建てるかを一から決められます。新築ならではの最大の自由度が、間取りの選択です。
間取りが変わると、戸数が変わります。戸数が変わると家賃収入の合計が変わり、キッチンや浴室といった水回りの数も変わるので、建築費も変わります。さらに、入居者の層が変わるので、どれくらいの期間住んでもらえるか、退去のたびにいくらかかるかも変わります。つまり間取りは、収入と支出の両方に同時に影響する、アパート経営のいちばん根っこの判断だといえます。
1K・1LDK・2LDKの特徴と向いている入居者

1K:戸数を稼げるが、競合も多い
1Kは20〜25㎡程度の単身者向けの間取りです。1戸あたりの面積が小さいので、同じ延床面積でも戸数を多く取れます。また、家賃は面積に比例しては上がらないため、1㎡あたりの家賃は小さい部屋ほど高くなりやすく、表面利回りを上げやすいのが最大の強みです。
需要の土台も厚く、2025年の国勢調査では、大阪市の単独世帯は93万1,399世帯で、一般世帯の58.7%を占めています。2020年の調査(53.6%)から5年でさらに増え、世帯の6割近くが一人暮らしという状況です。ただし、単身者向けの物件は供給も多く、駅から遠い、設備が古いといった弱点があると家賃競争に巻き込まれやすい面があります。また単身者は転勤や結婚などで住み替えが早い傾向があり、入れ替わりのたびに原状回復や募集の費用がかかります。[AS1]
1LDK:単身の「ゆとり需要」とカップルを両方狙える
1LDKは30〜40㎡程度で、寝室とリビングを分けられる間取りです。在宅勤務が広がったこともあり、少し家賃が高くても広さや仕事のスペースを求める単身者もいます。加えて、二人暮らしのカップルや共働きの夫婦も候補になるため、1つの部屋で狙える入居者の幅が広いのが特徴です。
1Kよりも住み替えの理由が生まれにくく、比較的長く住んでもらいやすいのもメリットです。反対に、戸数は1Kより減るため、1室の空室が収入に与える影響は大きくなります。周辺の家賃相場が低いエリアでは、広さに見合う家賃が取れず、利回りが伸びにくい点にも注意が必要です。
2LDK:長く住んでもらえるが、立地を選ぶ
2LDKは50㎡以上で、子どものいる世帯や、それぞれの個室がほしい夫婦などが中心になります。子どもの学校や地域とのつながりがあるため、一度入居すると長く住んでもらいやすく、入退去のコストを抑えやすいのが大きな強みです。
一方で、戸数は最も少なくなり、1㎡あたりの家賃も下がりやすいため、表面利回りは3つの中で最も低くなりがちです。また、ファミリー層は駅からの距離よりも学区や生活環境、駐車場の有無を重視するなど、選ぶ基準が単身者とは大きく異なります。ファミリーが「ここで子育てしたい」と思える立地かどうかが、2LDKの成否を分けます。
[AS1]出典:大阪市「令和7年国勢調査における大阪市の人口等基本集計結果を公表します」(2026年9月29日)単独世帯93万1,399世帯(一般世帯に占める割合58.7%)
https://www.city.osaka.lg.jp/hodoshiryo/toshikeikaku/0000683542.html
同じ土地で比べると、収益性はどう変わる?

では、同じ土地に3つの間取りでアパートを建てた場合、収益はどれくらい違うのでしょうか。ここでは考え方をつかむために、仮の数字で比べてみます。
専有面積の合計を約250㎡とすると、1K(25㎡・家賃6.5万円)なら10戸で年間家賃収入は780万円、1LDK(35㎡・家賃8.5万円)なら7戸で714万円、2LDK(50㎡・家賃10.5万円)なら5戸で630万円です。水回りの数が多いほど建築費は上がるので、総事業費を1Kで1億1,000万円、1LDKで1億500万円、2LDKで1億円と置くと、表面利回りは1Kが約7.1%、1LDKが約6.8%、2LDKが約6.3%となります。ここまでは1Kが有利です。
次に、入退去にかかるコストを加えてみます。1Kは平均3年、1LDKは平均4年、2LDKは平均6年で入れ替わると仮定し、退去のたびに原状回復と募集の費用、次の入居までの空室期間の家賃がかかるとします。すると年間の入退去コストは、1Kで約110万円、1LDKで約75万円、2LDKで約47万円となり、これを差し引いた利回りは1Kが約6.1%、1LDKが約6.1%、2LDKが約5.8%です。
表面利回りでは0.8ポイントあった1Kと2LDKの差が、入退去のコストを入れると0.3ポイントほどまで縮まり、1Kと1LDKはほぼ並びます。実際には、ここに競合の多さによる家賃の下がりやすさや、空室期間の長さの違いも加わります。どの間取りが勝つかは、数字を置く前提、つまり立地と入居者のニーズしだいで簡単に入れ替わるのです。
表面利回りだけで間取りを決めてはいけない理由
表面利回りは、満室で、家賃が下がらず、入居者が入れ替わらないことを前提にした数字です。試算のとおり、間取りによって入れ替わりの頻度もコストも違う以上、表面利回りだけで比べると、戸数の多い間取りがどうしても有利に見えてしまいます。
もう一つ見落とされがちなのが、10年後、20年後の競争力です。単身者向けの物件は新築が次々と供給されるため、築年数が経つと新しい物件と比べられ、家賃を下げざるを得なくなりがちです。反対に、周りに同じタイプの物件が少ない間取りは、築年数が経っても選ばれ続けやすくなります。間取りは「今いちばん利回りが高いもの」ではなく、「その立地で長く選ばれ続けるもの」で選ぶのが、新築アパートで失敗しないための基本です。表面利回りだけで間取りを決めてはいけない理由
間取りは「土地」と「入居者」から逆算して決める

では、何を手がかりに間取りを決めればよいのでしょうか。出発点は、土地の周りの入居者像です。駅に近く、大学やオフィス街へのアクセスがよい場所なら、単身者向けの1Kや1LDKが候補になります。駅からは少し離れても、スーパーや公園、評判のよい学校が近い住宅地なら、2LDKのほうが強みを活かせるかもしれません。
次に確認したいのが、周辺の競合です。単身者が多いエリアでも、すでに1Kのアパートが多く建っていれば、あえて1LDKにして差別化するという選択肢があります。人口が増えているか、住み続ける人が多いエリアかといった点も、長期の空室リスクに直結します。
そして、間取りと一緒に考えたいのが資金計画です。同じ土地でも、間取りによって総事業費と家賃収入のバランスが変わるため、融資の組み方や返済期間も含めて比べることが大切です。修繕費の山がいつ来るかも、水回りの数によって変わります。
企画・開発から関わる会社と組むと、間取りの選択肢が広がる

ここまで見てきたように、間取りの判断には、エリアの調査、建築費の見積もり、家賃の設定、融資の条件といった、いくつもの専門知識が関わります。完成した物件を買うだけなら、こうした判断はすでに誰かが済ませています。土地探しの段階から企画・開発に関われる会社と組めば、間取りそのものを投資家の目的に合わせて設計できます。
パートナーを選ぶときは、間取りの根拠になる調査をどこまで自社で行っているかを確かめましょう。たとえば、人口の定着率や賃料相場を分析して開発エリアを選んでいるか、規格型のプランに当てはめるのではなく、エリアに合った建築会社を選べるか、複数の賃貸会社の意見を聞いて家賃を決めているかといった点です。大阪を拠点とする今村不動産のように、リサーチから施工、賃料設定までを協力会社と一貫して進めるデベロッパーであれば、間取りの判断にも裏付けを持たせやすくなります。
融資に強いかどうかも見ておきたいポイントです。木造アパートでも、住宅性能評価で高い等級を取得した新築であれば、RC造と同等の30〜35年の融資を受けられるケースがあります。金融機関と日頃からやり取りしている会社なら、各行の融資姿勢を踏まえたうえで、間取りと資金計画をセットで提案してもらえるでしょう。
新築アパートの間取りについてよくある質問

Q.1Kは供給が多すぎて、これから建てるのは危ないですか?
一概に危ないとはいえません。単身世帯の割合は全国的に高まり続けており、国立社会保障・人口問題研究所の推計では、2020年に38.0%だった単独世帯の割合は2050年に44.3%まで上がる見込みです。ただし、駅からの距離や周辺の競合によって明暗が分かれやすい間取りなので、立地の見極めがより重要になります。[AS1]
Q.1棟の中で1Kと1LDKを混ぜるのはありですか?
十分に考えられる選択肢です。異なる入居者層を組み合わせることで、どちらかの需要が落ちたときのリスクを分散できます。ただし、間取りが増えるほど設計や募集の手間は増えるので、エリアの需要を踏まえて組み合わせることが大切です。
Q.木造アパートでもファミリー向けの2LDKは需要がありますか?
あります。最近の木造アパートは耐震性やデザイン性が向上しており、学区や生活環境がよいエリアでは、マンションより家賃を抑えた2LDKを求めるファミリー層もいます。上下階の音への配慮など、ファミリー向けならではの設計の工夫がポイントになります。
[AS1]出典:国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計(全国推計)2024年推計」単独世帯割合 2020年38.0%→2050年44.3%
まとめ
1K・1LDK・2LDKには、それぞれ強みと弱みがあります。1Kは戸数を稼いで表面利回りを上げやすく、1LDKは幅広い入居者を狙え、2LDKは長く住んでもらいやすい。しかし、入退去のコストや競合まで含めると、その差は立地と入居者しだいで大きく変わります。
大切なのは、間取りを先に決めるのではなく、土地と入居者から逆算して決めることです。新築アパートの強みは、その答えを建物に反映できることにあります。エリアの調査から建築、賃料設定、融資までを一貫して考えられるパートナーと組んで、長く選ばれ続けるアパートを企画しましょう。
*今村不動産の新サービス「木造アパートシリーズWell-being」の詳細を見てみる
