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不動産投資物件を売却したら手残りはいくら?税金・減価償却・譲渡所得を解説

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2026.08.25
不動産投資物件を売却したら手残りはいくら?税金・減価償却・譲渡所得を解説

不動産投資物件が「3,400万円で売れた」と聞くと、その金額がまるごと手元に残るような気がします。しかし実際には、仲介手数料を払い、ローンを一括返済し、さらに翌年には譲渡所得税を納めることになります。とくに投資用物件には、保有中に計上してきた減価償却費が取得費を目減りさせ、想像以上の譲渡所得が発生するという構造的な落とし穴があります。この記事では、売却して最終的にいくら手元に残るのかを、計算式と具体的なシミュレーションに沿って解説していきます。


売却の「手残り」を決める4つの要素

不動産投資物件を売却したときに手元に残る現金は、売却価格から、譲渡費用とローン残債と税金を差し引いた金額です。

手残り = 売却価格 −(譲渡費用 + ローン残債 + 譲渡所得税・住民税)

このうち売却価格とローン残債は明快な数字です。問題は残りの2つで、譲渡費用は「どこまでが売却のための支出か」という線引きが必要です。また税金にいたっては売却から納税まで最長1年以上のタイムラグがあるため、決済直後の通帳残高を見て「これだけ儲かった」と誤解しやすいのです。

ここで納税資金を使い込んでしまい、次の物件の頭金が足りなくなるというのは、投資家が最も陥りやすい失敗のひとつです。売却で得た現金のうち、税金分は最初から別口座に分けておくことを強くおすすめします。


譲渡所得の計算式と、その中身

売却益にかかる税金は「譲渡所得税」と呼ばれますが、正確には所得税・復興特別所得税・住民税の合計です。課税ベースとなる譲渡所得は、売却価格から取得費と譲渡費用を差し引いて計算します。

譲渡所得 = 売却価格 −(取得費 + 譲渡費用)   

ここで重要なのは、ローン残債がこの計算に一切登場しないという点です。借入金の返済は資金の移動であって費用ではないため、いくら返済しても譲渡所得は減りません。手残りの計算とは別のロジックで税額が決まる、と切り分けて理解する必要があります。

取得費は減価償却によって目減りする

取得費とは、その物件を手に入れるためにかかった費用で、購入代金のほか購入時の仲介手数料、印紙税、測量費、設備費や改良費などが含まれます。ただし建物については購入代金がそのまま取得費になるわけではなく、購入代金から保有期間中の減価償却費の累計額を差し引いた未償却残高が取得費になります。

保有中、減価償却費は現金支出のない経費として不動産所得を圧縮し、税負担を軽くしてくれます。しかし売却の局面では、圧縮してきた分がそっくり取得費の減少として跳ね返り、譲渡所得を膨らませます。減価償却による節税は「免税」ではなく「課税の繰り延べ」に近い性質を持つと理解しておくのが正確です。

この効果は築古物件ほど強く出ます。法定耐用年数を超えた中古物件は短い年数で一気に償却できるため保有中のメリットが大きい反面、数年で建物の簿価がほぼゼロに近づきます。償却が進んだ物件は、売却価格が購入価格を下回っていても譲渡所得が発生し、課税されることがあるのです。なお土地は減価償却の対象外で、取得費は購入時の金額のまま据え置かれます。

もうひとつ注意したいのが登録免許税・不動産取得税の扱いです。マイホームなら取得費に含められますが、賃貸に使っている物件では、これらは不動産所得の必要経費に算入されるため取得費には含められません。自宅売却向けの解説をそのまま参考にすると間違えやすいため注意しましょう。

また、契約書や領収書を紛失して取得費が証明できない場合は、売却価格の5%を取得費とみなす「概算取得費」しか使えません。売買契約書と購入時の領収書は、売却するその日まで保管しましょう。

譲渡費用になるもの・ならないもの

譲渡費用は売るために直接かかった費用に限られ、売却時の仲介手数料、売買契約書の印紙税、測量費や建物解体費、入居者への立退料などが該当します。

一方で、抵当権抹消の登記費用、売却前の修繕費、引っ越し代、税理士報酬などは認められません。判定はあくまで「その資産を譲渡するために直接必要だったか」で行われます。手残りの計算では差し引かれる現金支出ですが、税額を減らす効果はないという違いを押さえておきましょう。


税率が倍近く変わる「5年ルール」

譲渡所得に対する税率は、所有期間によって2段階に分かれます。所有期間が5年以下なら短期譲渡所得として所得税30%・復興特別所得税0.63%・住民税9%の合計39.63%、5年を超えていれば長期譲渡所得として所得税15%・復興特別所得税0.315%・住民税5%の合計20.315%です。

同じ譲渡所得でも税率はほぼ倍です。500万円の譲渡所得なら、短期で約198万円、長期で約102万円と100万円近い差が生まれます。

そして最大の落とし穴が、この5年の数え方です。判定基準日は譲渡した年の1月1日であり、実際の保有年数ではありません。たとえば2021年3月に購入した物件を2026年8月に売却した場合、実保有期間は5年5か月ですが、2026年1月1日時点では4年10か月しか経っていないため短期譲渡と判定され、39.63%が適用されます。2027年1月まで待って売れば税率は20.315%。数か月のずれで税額が半分になり得るということです。

実務的には取得日の翌年から数えて6回目の1月1日を迎えて初めて長期譲渡になると覚えておくと間違いません。なお相続や贈与で取得した物件は被相続人・贈与者の取得日を引き継ぐため、名義が変わって日が浅くても長期と判定されます。


手残りシミュレーション:3,400万円で売却したケース

具体的な数字に落とし込みます。2019年10月に中古区分マンション(RC造)を3,000万円(土地1,800万円・建物1,200万円)で購入し、諸費用200万円は取得費に算入して土地120万円・建物80万円に按分。築25年で取得したため簡便法の耐用年数は27年、定額法の償却率は0.038です。借入は2,700万円・金利1.9%・35年。これを2026年8月に3,400万円で売却したとします。

ステップ1:取得費を計算する

建物の取得価額は1,200万円+80万円=1,280万円。年間の減価償却費は1,280万円×0.038=約48.6万円で、保有期間およそ83か月分を計上すると、減価償却費の累計は約336万円になります。建物の未償却残高は1,280万円−336万円=944万円。これに土地の1,920万円(1,800万円+120万円)を足した2,864万円が取得費です。購入時に3,200万円を支払っているのに、税務上の取得費は336万円も少なくなっている点に注意です。

ステップ2:譲渡費用を計算する

仲介手数料の上限は「売買価格×3%+6万円+消費税」ですから、3,400万円なら118.8万円。これに売買契約書の印紙税1万円と、その他の売却関連費用3万円を加えて、譲渡費用は約123万円とします。

ステップ3:譲渡所得と税額を出す

3,400万円−2,864万円−123万円=譲渡所得は約413万円。2026年1月1日時点の所有期間は6年2か月なので長期譲渡に該当し、税率は20.315%です。413万円×20.315%=税額は約84万円となります。

ステップ4:手残りを確定させる

売却時点のローン残債を約2,298万円とすると、手残りは3,400万円から譲渡費用123万円・残債2,298万円・税金84万円を差し引いた約895万円。売却価格の約26%です。この感覚値の有無で、出口戦略の精度は大きく変わります。

同じ物件が短期譲渡と判定されれば税額は413万円×39.63%=約164万円となり、手残りは約815万円まで減ります。また仮に減価償却費を計上していなければ譲渡所得は約77万円、税額は約16万円で済んだ計算になり、減価償却によって税額が約68万円増えていることも読み取れます。保有中の節税メリットの一部を、ここで返している構図です。


見落としやすいコストと、手残りの増やし方

実際の売却では細かい支出も発生します。ローン一括返済時の繰上返済手数料は、残債に対する定率で数十万円になることもあります。抵当権抹消の登記費用と司法書士報酬も、現金は確実に出ていきます。さらに消費税の課税事業者に該当する場合は、建物部分の売却に消費税がかかります(土地は非課税)。反対に固定資産税・都市計画税の精算金は譲渡価額に算入しますので、申告漏れに注意してください。

そのうえで手残りを増やすには、まず売却時期を必ず1月1日基準で確認することです。境界付近の物件なら年をまたぐだけで税率が半減しますが、下落局面では待つ間に価格が下がるリスクもあり、両者を天秤にかける判断が必要です。

次に取得費の証拠書類をそろえること。保有中の資本的支出も取得費を構成しますが、賃貸用物件では資本的支出自体も減価償却の対象になるため、加算できるのは償却後の未償却残高である点に注意が必要です。

また、土地建物の譲渡損失は給与所得などとは損益通算できませんが、同じ年の他の不動産の譲渡益とは相殺できます。含み損のある物件と含み益のある物件を同じ年に売れば、全体の税負担を抑えられる可能性があります。一定要件を満たす事業用資産の買換えで課税を繰り延べる特例もありますが、要件が細かく将来の減価償却費が小さくなる副作用もあるため、適用の可否は必ず税理士に確認してください。

納税のスケジュールも押さえておきましょう。売却した年の翌年2月16日から3月15日までに確定申告を行い、所得税と復興特別所得税を納付し、住民税は6月以降に納税通知書が届いて納付します。2026年8月の売却なら所得税は2027年3月、住民税は2027年6月以降と、売却から10か月以上先まで納税が続きます。


物件売却の税金についてよくある質問

Q.売却価格が購入価格より低ければ、税金はかからない?

かかるケースがあります。税務上の取得費は減価償却費を差し引いた後の金額なので、購入価格を下回る価格で売っても譲渡所得がプラスになり得ます。とくに築古物件を短い年数で償却してきた場合に起こりやすい現象です。

Q.売却で損失が出たら、給与所得と相殺できる?

投資用不動産の譲渡損失は分離課税のため、原則として給与所得や事業所得とは損益通算できません。同じ年の他の土地建物の譲渡益とは相殺可能です。居住用財産には損益通算と繰越控除の特例がありますが、対象は自宅に限られます。

Q.3,000万円特別控除は使える?

居住用財産の特例のため、純粋な投資用物件には使えません。ただし元が自宅の物件なら、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却するなど、一定の要件を満たせば適用の余地があります。


手残りは、買う前から設計しよう

不動産投資の成否は、家賃収入だけでなく売却時の手残りまで含めて確定します。手残りは売却価格から譲渡費用・ローン残債・税金を差し引いた金額で決まり、その税金は減価償却で目減りした取得費をもとに計算されます。保有中に節税してきた分だけ、売却時の課税所得は大きくなるのです。

売却を考え始めたら、まず取得日と譲渡予定日を1月1日基準で確認し、次に建物の未償却残高を把握する。この2つで手残りの精度は大きく上がります。そして物件を買う前から出口の手残りを試算しておくことが、長期的に資産を伸ばす投資家に共通する姿勢だと言えるでしょう。