不動産投資と減価償却の関係

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不動産投資と減価償却の関係

不動産投資を行う上で必ず行わなくてはならないのが会計処理。会計処理を行う際には、「減価償却」といった言葉が出てきます。「減価償却」は不動産売却時に重要なキーワードですが、完全に理解するには専門的な知識を要するため、一般の方にとっては難しいかもしれません。本記事では、減価償却の計算方法について解説します。

減価償却とは

 減価償却の考え方は、時間の経過や使用とともに価値が下がっていくという前提があります。建物などは利用することによって資産としての価値が減り、この目減り分を「減価償却費」として価額を減少させるのです。減価償却の会計上の手続きとしては、固定資産の価値を減少させ一定の方法で各年分の費用として配分していくというものになります。

 

1.なぜ費用を分割するのか

 そもそも、なぜ購入費用を使用する期間で分割する必要があるのでしょうか。それには3つの理由があります。

 

 1つ目は業績の乱降下を防ぐということです。購入年度に一括計上すれば、その年だけ大きな赤字になり、会計上の見え方が悪くなる恐れがあります。決算が赤字になると銀行から融資を受けたい時に不利に働く可能性があるので、費用を分割する必要があると言えます。

 2つ目は利益を正確に把握するためです。資産を購入したことによって得られる利益は初年度だけではありません。初年度以降もどの程度利益が生まれたのか把握するためにも分割して計上する必要があるのです。

 3つ目は資産の価値を正確に評価するためです。車や建物などの資産は年が経つほど価値が下がります。価値が下がった分を減価償却として経費に計上しなければ保有している資産の価値を正確に把握できません。

 

このように減価償却は毎年の資産状況を正確に評価するために重要な考え方と言えます。

 

2.減価償却を使用する場面

 減価償却費を活用する主な場面は、家賃収入がある場合と、不動産を売却するときです。マンションやアパートなど賃貸物件を経営し家賃収入を得ている場合は、確定申告の際にその収益と合わせて物件の取得費を申告しなければなりません。この際、減価償却費は必要経費として計上することができるので、減価償却費の計算が必要になります。

 

 また、賃貸に利用していた不動産を売却し、利益が出た場合も減価償却費が必要になります。不動産を売却して得た売却益を譲渡取得と呼び、この譲渡取得に対してかかる税金(譲渡所得税)の計算に減価償却費が関わってくるからです。なお、譲渡取得税は給与取得などと同じように、利益(売却益)が大きいほど、納税額も大きくなります。計算の結果、譲渡取得がプラスなら税金が生じ、譲渡取得がマイナスなら税金が生じないことになります。

 

不動産売却で得た譲渡所得は「売却金額ー(取得費+譲渡費用)」で算出します。「取得費」は物件の購入時にかかった建物価格に仲介手数料や各種税金など諸経費を合わせた費用、「譲渡費用」は売却時にかかった仲介手数料や各種税金を指し、これらの費用を売却時に得た金額から差し引くことで売却益を算出します。この際、取得費は建物の購入にかかった費用から減価償却費を差し引く必要があります。

 例えば、購入した不動産の価格が、諸経費含め5,000万円、減価償却費が1,000万円の場合、取得費は5,000万円ー1,000万円=4,000万円です。

 

 

減価償却の計算方法

 計算方法を知る前に注意したいのが、土地は減価償却資産ではないということです。実際の土地価格は市況によって変化しますが、会計上、土地は経年によって価値は落ちないものと考えます。

よって、土地付きの建物を購入した場合、減価償却できるのは建物のみである点に気をつけましょう。

 

 

1.減価償却の2つの計算方法

 減価償却費の計算のために重要なキーワードが「法定耐年数」です。これは通常の使用において予定される効果をあげることができる日数、つまり、会計上の使用可能年数を指します。

 例えば、住居用建物の場合、木造・合成樹脂造なら22年、鉄筋コンクリート造なら47年というように、法定耐年数は国税庁によって決められています。減価償却が用いられる資産を減価償却資産といい、建物以外に家具や車両など様々な種類があります。各減価償却資産の法定耐年数は以下の資料から確認できるので気になる方はチェックしてみてください。

 

国税庁「主な減価償却資産の耐用年数表」

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/pdf/2100_01.pdf

 

また、減価償却や固定資産税についてはこちらの記事で詳しく解説していますのでご参照ください。

https://www.imaestate.com/media/news/254/

 

 

 減価償却の計算方法には、「定額法」と「定率法」の2種類があり、減価償却方法の選択の届出を出さない場合は定額法で計算します。定額法とは固定資産の耐用年数中、毎年一定額ずつ経費を計上する方法です。減価償却の金額が毎年同じになるので、計算がしやすく収支の見通しが立てやすいことがメリットとして挙げられます。定額法の計算式は下記のとおりです。

 

〈定額法の計算式〉

減価償却費=取得価額×償却率

 

「取得価額」は[購入にかかった費用(購入手数料、税金等)+調整費用(工事費、据付費等)]を指し、「償却率」は耐用年数に応じた割合のことで、[100÷(法定耐用年数)]で求められます。

仮に、法定耐用年数10年の資産を2,000万円で購入した場合、償却率は100÷10=10%(0.1)なので、減価償却費は

2,000万円×10%(0.1)=200万円

となります。よって10年にわたって毎年200万円ずつ計上していくことになります。ただし、最終年度は減価償却費を調節し残存薄価として1円を残す必要があります。こうすることで法定耐用年数を過ぎた後の固定資産は1円の価値があるとして、利用中の資産であることを記帳上に記録できます。

つまり、1年目から4年目までの減価償却費は常に200万、最終年度の9年目は199万9,999円が減価償却費となり、未償却残高が1円となります。

 

一方、定率法は未償却残高を一定の割合で減価償却していく計算方法で、償却費の額が初めの年ほど多く、年とともに減っていきます。なお、平成28年度税制改正で建物や付属設備、構築物等において定率法は廃止されていますので、これから物件を購入するという方はあくまで参考程度に知っておくとよいでしょう。定率法の計算式は以下の通りです。

 

〈定率法の計算式〉

減価償却費=未償却残高×定率法の償却率

 

未償却残高とは、資産を取得した金額から減価償却した金額を差し引いた残高です。未償却残高は年数ごとに減少するため、償却が進むごとに減価償却費が減る仕組みとなっています。

 

 

2.事業用不動産の場合

 事業用不動産とは、貸付用または事業用の建物のことで、賃貸マンションやアパート、個人事業主が保有している店舗や倉庫、事務所などを指します。事業用不動産の減価償却方法は、何度もルールが改正されているため、取得時期に気をつけて計算する必要があります。

2007年3月31日以前に取得した資産の計算方法は以下の通りです。

 

〈2007年3月31日以前に取得した資産の減価償却費〉

減価償却費=建物購入額×0.9×償却率×業務に供された月数÷12

※償却率は旧定額法の償却率を使用します。

 

一方、2007年4月1日以後に取得した資産の計算方法は以下の通りです。

 

〈2007年4月1日以後に取得した資産の減価償却費〉

減価償却費=建物購入価額×償却率※×業務に供された月数÷12

※償却率は新定額法の償却率を使用します。

 

これらの計算式で「業務に供された月数」は1日でも使うと1月分に換算されます。例えば、3ヶ月と1日であった場合は4ヶ月となります。

 

 

3.非事業用不動産の場合

 非事業用不動産とは、居住用の建物のことを指します。非事業用不動産の減価償却の計算方法は、1つだけなので非常に簡単です。減価償却の計算方法は以下のようになります。

 

減価償却費 = 建物購入価額 × 0.9 × 償却率 × 経過年数

 

非事業用不動産は、月単位ではなく「経過年数」と呼ばれる年単位で計算します。経過年数は、築年数ではなく所有期間を指し、6ヶ月以上の端数が出た場合は1年と計算して6ヶ月未満の端数が出た場合は切捨てます。例えば、償却期間が20年3ヶ月の場合、20年として計算します。

 

 

事業用不動産と非事業用不動産の耐用年数の違い

 事業用不動産の耐用年数は非事業用不動産と比べ、長く設けられています。これは、マイホームはお金儲けを目的に売却しているわけではないため、なるべく税金を発生させないように配慮されているからです。償却率は[1÷耐用年数]で求められ、非事業用の償却率は耐用年数の1.5倍の年数に対応する数値となっています。耐用年数が長くなると譲渡所得が小さく計算されることから、かかる税金が少なくなります。

 

事業用と非事業用の違いを理解した上で最適な不動産投資を

 事業用不動産は取得年次にとって計算方法が異なってきます。非事業用不動産は、税金をなるべく発生させないようにするために、償却率が事業用の1.5倍です。また、事業用不動産はその取得年によって減価償却の計算方法が異なるので注意が必要です。事業用と非事業用の違いを理解し、自分の不動産に合わせた減価償却方法を用いるようにしましょう。

 

 今村不動産ではさまざまな不動産を扱っており、お客様の資産計画に合わせたご提案が可能です。また、提携する専門家と連携することで減価償却をはじめ不動産投資の資金繰りや資金計画のサポートも可能です。不動産投資をお考えの方は是非今村不動産までご相談ください。

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